《過去の例会》

劇団 俳優座『猫、獅子になる』

第452回例会 劇団 俳優座

2025年3月4日㈫18:30~

    3月5日㈬13:00~

会場 静岡市民文化会館 中ホール

作/横山拓也

演出/真鍋卓嗣

出演/岩崎加根子、清水直子、安藤みどり、塩山誠司、増田あかね、志村史人 他

 

 80代の親が50代の子の生活の面倒をみる「8050問題」は深刻化し、親子で孤立死するケースも起きています。そういった状況に直面した家族の心理や振る舞いをつまびらかに表現し、現代社会に潜む問題点を浮き彫りにすることが、この作品のテーマとなっています。深刻で現代的なテーマを扱いながら、随所に笑いが散りばめられています。

今作は、第30回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞しました。(静岡・清水合同例会)

俳優座「猫、獅子になる」は、静岡県、長野県、中部・北陸ブロックの3ブロック初の統一例会として、全ての鑑賞会が「前例会クリアで迎えよう」と取り組んできた舞台です。その3ブロックの初っ端として、静岡・清水の合同例会がありました。静岡市民劇場は2024年から5例会連続の前例会クリアを続けてきており、6例会連続(1年間)を目指していました。しかし、直前例会のこんにゃく座「遠野物語」から僅か1か月しか時間がなく、20名の退会者に対し10名の新入会に終わり前例会クリアはなりませんでした。大変残念ですが、次の「殺しのリハーサル」に向けて気持ちを切り替えるしかありません。

 

作品は社会問題となっている「8050問題」を真正面から取り上げながら、親子・夫婦・様々なコミュニティを描き、観客誰もが思い当たるリアリティを作り出していました。さらには、動かない大道具を複数の場所に設定し観客の想像力を膨らます、舞台作品ならではの演出で「さすが俳優座」と、楽しませてくれたと思います。ラスト近くの静かなどんでん返しには多くの会員が涙を流したことでしょう。

今回は昼の終演後にロビー交流会を開きました。92歳の岩崎加根子さんをはじめ、引きこもり役の清水直子さん、妹役の安藤みどりさん、その夫役の塩山誠司さん、劇団座長役の若井なおみさんの5名が参加していただきました。俳優としての心構えや今作品の役柄への取り組み方など、会員の感想と質問に丁寧に答えていただきました。

 

翌日には俳優座制作の板倉さんが「何も終わっていない。これからだよ」と、作品のメッセージが込められた、静岡市民劇場を励ますような『猫獅子新聞 速報』を発行してくださいました。そして、次の例会場・三島に向かう俳優陣を多くの会員が笑顔で見送りました。

今回、昼の回終演後のロビー交流会と大道具の搬出が重なったため、搬出担当の会員さんは交流会に参加出来ませんでした。そこで、制作の板倉さんが搬出担当の会員さんを気遣ってくださり、「搬出の心構え」的マニュアルや記念撮影、準備運動などをセッティングしてくださいました。搬出担当の会員さんの感想も「今まで以上に搬出が楽しかった」と好評のようでした。

オペラシアター こんにゃく座『オペラ 遠野物語』

第451回例会 オペラシアター こんにゃく座

2025年1月28日㈫18:30~

    1月29日㈬13:00~

会場 清水マリナート 大ホール

台本/長田育恵

音楽/萩 京子ほか2名

演出/眞鍋卓嗣

出演/こんにゃく座一同

 

 故郷遠野の闇たちが語りかける。「俺たちを置いていくのか…」振り切って遠野をあとにする佐々木喜善。作家志望の喜善は、水野葉舟を介して柳田国男に弟子入りを願い出る。柳田は喜善の作品より、喜善が語る故郷に昔から伝わる物語に深く興味を抱く。喜善にしか感じられない闇や座敷童の存在などが次々と語られ、「物語の世界」と「現実の世界」が交錯し、「遠野物語」誕生の過程が描かれる。

(静岡・清水合同例会)

会員の感想

◎心配していた東北弁も意外と分かった、ような気がしました。と言うよりは、言葉を楽しんで観ていたのかもしれません。ピアノ、チェロ、フルート、打楽器と役者さんとの息の合った歌は素晴らしい!冷たい風に吹かれていても、とても気持ちがいい自転車での帰り道でした。

◎遠野物語、素晴らしかったです!!色々な場面をチェロ、フルート、ピアノ、打楽器だけの生演奏で表現する様、感動でした。こんなにも吸い込まれ最後まで酔いしれていました。開演前の5例会クリアの報告も本当に良かったですね。

◎フルートの不穏な旋律から始まり、物語の世界に引きずり込むように「闇」たちが現れた。もうここから期待でワクワク。声が美しすぎる喜善の祖母、シンクロした座敷童の少女二人、餅を喰う坊主、絶妙な楽士の演奏と舞台装置や照明までやっぱりこんにゃく座! 単に昔話でもなく、日々の暮らしの中で人が生きていくために生み出され語り継がれた物語。目に見えないものの存在を見失わず、ずっと声を聞き続けたい。 

◎歌がお上手でさすがです。沢山の出演者の方が一生懸命演じられて素晴らしかったです。 ◎少し分かりにくい感じがしましたが、久しぶりの演劇で演者の方々のすばらしいステージを感じました。 ◎生演奏がすばらしい。チェロ、フルート、ピアノ、打楽器。舞台の作りが大変良い。囲炉裏が上から降りなかなか上手くできている。こんにゃく座はいつも楽しい。 ◎とても声が美しくとおっていて、どの人の動きも良く物語の中に引き込まれて見ました。 ◎方言がよく分からないところがありましたが、あとは声もよく、おもしろかったです。 ◎ミュージカル、なかなか観られないミュージカル、とても楽しめました。 ◎役者さんの歌と曲、それに舞台装置が相互に響き合って素晴らしい。遠野物語を紡いでくれました。 ◎生演奏がとても良かった。すばらしい。舞台装置もすごく、演技に引き込まれました。 ◎不思議な世界へ・・・昔々はこんな事があったのか??生演奏すごい。座敷童っている? ◎楽器演奏もよくて素晴らしい舞台でした。遠野の方言が理解できなかったのが残念でした。 ◎音楽とのコラボ楽しませていただきました。物語を育む土地、不思議、いいなと思いました。 ◎歌、演奏はもちろん、物語、照明、凄かった。架空の話と現実が重なり、とても深い話になっていたと感じていました。とにかくみんなすごい! ◎大変贅沢な舞台でした。楽士4名と生唄はなかなか観られないと思います。鑑賞会ならではの劇団との一体感が味わえました。 ◎予想通りの美しさ、不思議の世界を楽しみました。早くまた来てください。 ◎遠野に出かけたくなりました。物語の世界に引き込まれました。 ◎日本語のオペラは心地良い。打楽器が効果的。おとぎの世界に迷い込んだ感じ。 ◎音楽(演奏)が良かった! ◎『遠野物語』面白かったです。民話の世界と現実の世界が入り混じった不思議なストーリー(オペラ)でしたが、いつのまにかその不思議な世界に引き込まれました。 ◎歌声が良かった。  ◎生演奏も時には効果音となり、歌やコーラスも綺麗で、素敵な舞台でした。 ◎遠野物語、と~っても良かったです。以前に訪れた遠野地方を思い出し、より物語に入っていけました。 ◎上演時間が長めでしたが、丁寧に表現されていて見応えのある舞台でした。生演奏、コーラスも素敵でした。

 

有志と運営サークルによる搬入、今回はいつもにも増してパネルや飾り物が多い舞台でした。清水市民劇場はいつもの赤いエプロンを着用し、静岡の会員も少し拝借しました。搬入の面白さは、ご自分が運んだパネルや道具が、上演時に一味違ったように見えるというのです。鑑賞会ならではの話ですね。物販は、パンフレット・クリアファイル・Tシャツ・DVD・CD・記念ブック・トートバッグと多岐にわたり、こんにゃく座の『お客さんを楽しませたい』という意気込みが伝わってきます。

制作・俳優の相原さんのご挨拶は「静岡、清水両市民劇場ともに前例会クリアで迎えていただき、大変嬉しいです」で始まりました。そう言ってくださることが、私たちも本当に嬉しい。鑑賞会を回る劇団の皆さんは異口同音、「前例会クリア」の達成を心待ちにされていることがひしひしと伝わってきます。ともに歓びあえることが素晴らしいと今回も心から思いました。

 

舞台は『遠野物語』がどうやって出来上がったのかを、そこに関わる人たちの人間模様を通して見せてくれました。また、明治時代の東北地方の生活がいかに厳しかったかが良く伝わってきて、胸が締め付けられるような思いも感じました。会員さんの受け取り方は様々なのようですが、楽士4名と俳優たちのアンサンブルは素晴らしいとの感想が多かったです。

劇団 朋友『あん』

第450回例会 劇団 朋友

2024年11月26日㈫18:30~

    11月27日㈬13:00~

会場 静岡市民文化会館 中ホール

原作/ドリアン助川

脚本/杉浦久幸

演出/大澤 遊

出演/益海愛子、戸井勝海、西海真理 他

 

 線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店。千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人を見てやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。徳江のつくる「あん」の旨さに舌をまく千太郎は、彼女を雇い、店は繁盛し始めるのだが…。

会員の感想

 主人公の徳江さんのドラ焼き作りへの思い、特に「あん」についてのこだわりがわかりませんでしたが、ストーリーが進むにつれて、彼女の生き方がわかってくると、とても切なく感じられました。徳江さんの生きてきた原動力が何なのか、やさしさの中に強い思いがあると感じました。(さやえんどう S・T)

      

 小柄でかわいらしい徳江さんの登場で舞台が明るくなる。徳江さんはこれまでに何回かこのドラ焼きのお店に足を運んだことがあって、ドラ焼きも食べたことがあるのだろう。「皮はまあまあだけど、あんがねえ。」と言って自分の作った「あん」を話が進むにつれ強引に置いていく。

 壮絶な人生を生きてきたはずの徳江さんなのに、それを感じさせない明るさや人に対するやさしさに心打たれる。はじめて療養所(いや収容所だ)から外へ出て働いてお給料をもらえたことに素直に喜ぶ純粋さももちあわせている。つらい生活のなかでもほんの小さなことに喜びを感じ、幸せを見つけながら生きてきたのだなあと思う。

 映画の「あん」では、徳江役の樹木希林と佳子役の市原悦子のやりとりが忘れられないが、今回のお芝居では、劇中で語られる塔和子さんの詩のひとつひとつが心に染みて、幸せな気持ちで帰路に着いた。素敵なお芝居をありがとうございまいした。(さやえんどう S・M)

 

【一口感想】

◎色々なことを考えさせられました。観に来てよかったです。ありがとうございました。 ◎色々考えさせらた。 ◎近くで見ることができました。良かったです。  ◎ただ泣けました。 ◎感動しました。舞台も良かったです。 ◎感動的。良かった。どら焼き買って帰ろう。 ◎重いテーマをしっかりと伝えていて心をうたれました。 ◎大変な病気で世の中から隔離された生活を送らなければならなかった人達、胸につまされました。 ◎忘れてはならない人権侵害がこのようにあったこと、人生を奪われた人たちがいたこと、考えさせられました。 ◎せつないけれど現実でした。 ◎重いテーマ。とても良かったです。 ◎舞台と詩の連動が感動をさらに広げてくれた。心に染みる作品だった。 ◎テーマが少し重く辛かったです。 ◎病気のことは知らないことばかりで、涙がとまりませんでした。 ◎自然体の演技がすばらしい。徳江さんありがとう! ◎感動し、涙した。 ◎さもありなんと思いながらの観劇‼時代の流れといいながら、取り返しのつかないことです。(「大変良かった」に花まるが付いていました) ◎演劇を見るのが初めてでした。おふたりの熱演に感動しました。 ◎徳江さん最高。心にしみました。 ◎泣きました。ありがとうございました。 ◎少人数で長いせりふですごくまとまっていてよかったです。題材のハンセン病のこともよかった。

代があったとつくづく思いました。 ◎とても感動いたしました。ありがとうございました。 ◎静かなしみじみとした良い時間だったと思う。仕事や生活の諸々に追われているが、高齢の母との暮らし、一緒にいる時間を大切にしたいと思った。 ◎14歳で病気になりつらい人生でした。最後に理解しあえる人達にあえてよかったですね。 ◎泣けました。 ◎忘れてはならない歴史。私もあんを毎年手作りしている。

 

2013年に出版されたドリアン助川さんの「あん」は、映画が樹木希林さん主演で作られ話題を呼びました。日本はハンセン病に対する国の施策が他の先進国に比べ、人権への配慮や対応がかなり劣り遅れたものだったことは、多くの会員の皆さんはご承知のことだと思います。物語はそういったことを象徴するシーンもあり、改めて人が無知であることの罪深さを感じました。

 

11月26・27日に静岡市民文化会館で行った例会「あん」は、4連続前例会クリアで無事終了しました。

4連続前例会クリアは「会員が一番多かった1997年以来27年振りくらいだろう」と、前事務局長の鈴木さんが言っていました。

 

例会まであと一週間というところで入会が停滞してしまい、「どうしようか」と思っていたところへ、ポスターを見た男性からホームページを通じて入会希望のメールが届きました。その方の入会で会員数が前例会を超えることができました。そして例会当日に、運営サークルから「2名の入会あり」のうれしい報告があり、前例会より3名多い会員数、1つ多いサークル数で劇団朋友の皆さんをお迎えすることができました。

初日の終演後にはロビー交流会が開かれました。主役・徳江役の益海愛子さん、店長・千太郎役の戸井勝海さん、療養所の友人・千代子役の西海真理さんが参加してくださり、会員と短いながらも楽しい時間を過ごしました。今回は合同公演ではなかったものの、清水からも60名以上の会員が観劇し会場を盛り上げました。

その初日は静岡市内が夜になって大雨となり、劇団員の方々がホテルまで帰るタクシーが見つからず、会員が車2台で3往復して送り届けるというハプニングもあり、記憶に残る例会となりました。

俳優座劇場プロデュース『夜の来訪者』

第449回例会(静岡・清水合同例会)俳優座劇場プロデュース

2024年9月24日㈫18:30~

    9月25日㈬13:00~

会場 グランシップ 中ホール大地

原作/J.B.プリーストリィ 翻訳/内村直也

脚本/八木柊一郎 演出/西川信廣

出演/柴田義之、山崎美貴、尾身美詞、馬場太史、脇田康弘、有賀ひろみ、瀬戸口 郁

 

 1945年の初演以来、世界中で上演されてきた社会派ミステリーの傑作。俳優座劇場では1991年から2006年までに、全国で281回の上演を重ねてきた作品。

 昭和15年の春、娘の婚約者を迎え一家団欒の夜を過ごす倉持家。そこに影山と名乗る警部が突然訪れる。影山はある女の死を告げ、家族に質問を重ねていく。初めに当主の倉持幸之助。企業経営者である彼は、かつていわれのない理由で彼女を解雇していた。次に娘の沙千子、婚約者の黒須、母親のゆき、そして息子の浩一郎と...彼女はなぜ死んだのか!?

 「人間は一人では、一つの家族では生きていけないのです」。そう言い残して影山は去るが、残された家族のドラマはそこから始まるのだった...。(静岡・清水合同例会)

8月10日には出演者のお一人、青年座の尾身美詞(おみ みのり)さんをお招きして事前学習会を開きました。教育会館入り口では運営委員の望月さんがウエルカムボードを持ってお出迎えしました。

尾身さんはクルクル変わる表情で感情豊かに作品の魅力を語りました。前半は、父親役・柴田さんの”良い加減”の日ごとに変わる芝居、母親役・山崎さんの魅力、婚約者役・脇田さんとの体格問題、所属劇団による役作りの違いなど、ミステリーだけに相関図以上のネタバレにならないよう気を付けながら、”本当に舞台が好き”という思いがひしひしと伝わってきました。

後半は質問を受け付け、演劇を志すきっかけや音楽好きのルーツ、劇団の中堅としてご自身の舞台以外のお仕事など、屈託なく明かしてくださいました。そして直筆色紙の抽選会、尾身さんとジャンケンを3回繰り広げて3名の方にプレゼントされました。最後には尾身さんを囲んで記念撮影、参加した皆さんの笑顔が充実した事前学習会を物語っています。

例会前日9月23日に静岡入りした俳優陣とスタッフ、静岡駅では理事を中心にお迎えに上がりました。翌日の例会初日朝10時から大道具の搬入があり、静岡と清水から有志が参加し鑑賞会の力を発揮しました。
9月24日25日にグランシップで行われた例会、俳優座劇場プロデュース「夜の来訪者」は、3例会連続で前例会クリアを達成、前例会を8名上回る606名の会員で迎え、多くの「良かった」「ドキドキした」などの好意的な声が上がるなか無事に終了しました。
初日の公演終了後にはロビー交流会が行われました。上演時間が1時間50分と長くなかったため、多くの会員が残ってくれました。メイクを落として最初に登場したのは、影山警部役の瀬戸口 郁(かおる)さん。低音を響かせ「会員の熱がビシバシと舞台に伝わってきた」と、会員の真剣な眼差しや息遣いが届いたようでした。その後に登場したのは母親役の山崎美貴さんとお手伝い役の有賀ひろみさん。お二人とも舞台の着物姿から一転も美しさは変わらずの笑顔で、会員からはその変貌に「ほう」の声が漏れていました。
会員からの質問は警部とお手伝いさんの不気味さに集中しました。亡くなったとされる女性の関係者なのか、はたまた生霊なのか・・・観る人によって解釈が異なるのは演劇の醍醐味でもありますね。
なお、能登半島を襲った豪雨災害を受けて、例会場で急きょ行った募金活動は、会員が多くの篤志を寄せてくださり、2日間合計で216,069円もの寄付が集まりました。全額を赤十字を通じて被災地に届ける予定です
25日の昼例会も会員の真剣な眼差しは変わらなかったようです。場所を事務所に移した交流会、出演者7名と制作・宮澤さんの全員参加で、運営サークルの皆さんを喜ばせてくれました。流石は役者さん、楽しみながら悩みながら取り組んだ役作りと、創造団体と鑑賞会との関係を「演劇文化の両輪」と称して密接な繋がりを意識した自己紹介は参加者を大いに盛り上げました。役者の皆さんは一様に「コロナ禍で苦しかったことがようやく過去のことになりつつある」と話し、3つのテーブルでは過去の作品や全国を旅しての出会い、静岡での思い出など、話の華がいっぱい咲いていました。制作の宮澤さんも創造団体と鑑賞会の現状を若干憂いながらも、持ち前の明るさと若さで「演劇文化を盛り上げていきたい」と意気込みを語っていました。役者さんと十分に会話し愉しんだ鑑賞会ならではの交流会は、静岡での再開を期してお開きとなりました。

青年劇場『星をかすめる風』

第448回例会(静岡・清水合同例会)青年劇場

2024年6月28日㈮18:30~

    6月29日㈯13:00~

会場 静岡市民文化会館 中ホール

原作/イ・ジョンミョン

脚本・演出/シライケイタ

出演/矢野貴大、北 直樹、葛西和雄 他

 戦中の福岡刑務所。看守の杉山が何者かに殺された。配属されたばかりの若い看守・渡辺は、杉山殺しの犯人の捜索を任され聴取を始める。聴取を進めていた渡辺は、日本名「平沼東柱」こと「尹東柱(ユン・ドンジュ)」という若い詩人が関係していると確信する。

 そんな中、九州帝大医学部の医師が派遣されてきた。「体調不良の囚人を治療する」と話すが、その治療を受けた尹東柱は次第に体調を崩していく。尹東柱は弱りながらも、自らの詩「星を数える夜」を口ずさむ。そして……。

(静岡・清水合同例会)

青年劇場『星をかすめる風』は、2023年9月の再演時に理事数人が紀伊國屋サザンシアターで観劇し、少し難しい物語ながら脚本の妙に加え、装置や照明・舞台転換など、実に演劇の素晴らしさが伝わる舞台だと思い、担当理事を中心に作品の魅力を訴えてきました。しかし、退会者が7名と僅かだったにも関わらず、新入会8名の獲得には最後の最後まで苦労しました。例会日前日になって女子大学生が連絡をくれて入会、ギリギリでの前例会クリアとなりました。しかし、劇団の皆さんの歓びの言葉から、心から「前例会クリアがなって本当に良かった」と思いました。

初日には劇団側との顔合わせを急きょ行うことになり、こちら側のメンバーが少なくて申し訳ない思いでした。劇団の皆さんの言葉からは気力十分な雰囲気が伝わってきて、開演が待ち遠しいと思わせました。小川理事長には記念のサイン色紙が贈られました。

いつもの相関図やウエルカムボードも劇団のメンバーは熱心にご覧になっていました。

この例会で特筆すべきは、県中部地区の高校演劇部の生徒40名と顧問を招待したことです。もちろん劇団側のご理解があっての実現でしたが、多感なこの年代に大変素晴らしい舞台を観てもらうことで、生涯演劇を観続けるか或いは創造団体に所属して生涯演劇をつくり続けるか、そういった選択をしてもらいたいという願いがこもっています。

素晴らしい舞台の余韻を抱いたまま、静岡市民劇場事務所での交流会を4年振りに行いました。劇団からは、ユンドンジュ役の矢野さん、看守・杉山役の北さん、刑務所の看護師・岩波役の傍島さん、九州帝大からの看護師・上原役の小切(こぎれ)さん、同じく大山役の藤代さん、囚人・チェチス役の島本さん、制作の沼田さんの7名(上の写真の順番)が参加してくださいました。

こちら側は運営サークルと理事、清水市民劇場の鈴木事務局長、浜松演劇鑑賞会から3名、そして例会前日に入会した大学生も参加しました。役者さん達は、素晴らしい舞台の達成感と、会員の感激した想いが伝わって、とても充実した笑顔が印象的でした。

劇団NLT『ミュージカル O.G.』

第447回例会(静岡・清水合同例会)劇団 NLT

2024年5月21日㈫18:30~

    5月22日㈬13:00~

会場 静岡市民文化会館 中ホール

脚本・作曲/まきりか
演出/本藤起久子
出演/旺なつき、阿知波悟美、池田俊彦、ピアノ:金森 大

 ここは新宿・歌舞伎町に残る、最後のキャバレー「ミラクル」。昭和の名残を残すこの店もあと一週間でその火が消えることになっていた。スター歌手を夢見て上京し、38年。いまは、この店のシンガーとして歌い続けている二人の女性。明日を夢見た若かりし頃を過ぎ、女性としての幸せや愛を求めながらも、ステージで歌うことを選んできた、彼女たちの人生。

 「老い」と「夢」の狭間でいま、場末の歌手人生が終わろうとしている。そんな彼女たちに起こった『ミラクル』。それは…?

素晴らしい舞台の余韻を残したまま、ロビー交流会が開かれました。感動がこんなにも多くの会員を居残らせたのでしょう。

阿知波さんも旺さんも、舞台の充実感が滲み出たコメントを話されていました。会員からもとても感激したという感想が伝えられました。お二人からは『O.G.』が大千穐楽であり、すでにお二人の実年齢に合わせた後日談『O.G.2』の準備が始まっていて、今年には舞台がスタートするそうです。静岡県ブロックでも再来年の例会企画に上がっており、多くの会員も期待して選択するかもしれません。

前進座『くず~い屑屋でござい』

第446回例会(静岡・清水合同例会)劇団 前進座

2024年4月1日㈪18:30~

    4月2日㈫13:00~

会場 グランシップ中ホール 大地

台本・演出/鈴木幹二
出演/柳生啓介、上沢美咲、藤井偉策、中嶋宏太郎、松宮美菜、鳴り物・杵屋邦寿

 

 正直者の屑屋さんが巻き起こす、小さな長屋の大事件! 江戸の片隅に人情の花が咲く!

 ある日、正直者の屑屋さんが裏長屋で武家女房千代と娘のしづから仏像を買いました。仏像をかごに入れて仕事に精を出していると、細川家の若侍の目に留まり、すぐに仏像が売れました。気分のいい屑屋さん、いい事をしたと喜んでいますと、仏像の中から出てきたものは……。

初日開演前の劇団との顔合わせと記念色紙の贈呈、カーテンコールで掲げたお祝いメッセージ『くず~い屑屋でござい500回達成おめでとう!』。後ろの客席にも分かるように両面に文字が書かれています。(この写真は千穐楽に劇団が舞台側から撮ったものです)

初日の終演後にはロビー交流会が開かれました。従来にないくらいの多くの会員が参加して、出演者全員と三味線の杵屋さんのお話に聴き入りました。会員からの質問や喜びの感想が伝えられ、市民劇場ならではの和やかな交流が会員の大きな拍手を呼んでいました。そして最後に男性役者3人による「木遣り」が唄われて会場の雰囲気は最高潮に達しました。

2日の千穐楽そして500回の記念公演を前に、『500回達成記念と千穐楽の集い』を、劇団と静岡・清水の役員と運営サークルが参加して行いました。来静していない前進座の座員からのメッセージが読み上げられたほか、公演の9割で屑屋さんを務めた柳生さんと鳴り物の杵屋さん、初演から10年ほど舞台監督も務めた台本・演出の鈴木さんに、感謝のメッセージと記念品目録が贈られました。

静岡市民劇場として4年振りとなる、劇団との交流会を静岡駅すぐ近くの会議室で開きました。千穐楽のあと岐阜のお仕事に向かった杵屋さんを除く、役者5人のほか演出の鈴木さんと制作の豊田さんが参加、会員も清水の2人を含め25人が参加して賑やかな交流会となりました。鑑賞団体ならではの愉しく賑やかな90分があっという間に過ぎてしまいました。宴の後には「楽しいね、またやりたいね」の声が多くありました。

イッツフォーリーズ『洪水の前』

第445回例会(静岡・清水合同例会)イッツフォーリーズ

2024年1月17日㈬18:30~

    1月18日㈭13:00~

会場 清水マリナート

原案/ジョン・ヴァン・ドルーテン  作/矢代静一

音楽/いずみたく  作詞/藤田敏雄

演出/鵜山 仁

出演/ラサール石井、宮田佳奈、藤森裕美 他

 

 この作品は、1980年にイッツフォーリーズの創設者、いずみたくのプロデュースで財津一郎と秋川リサの主演で上演。昭和57年度芸術祭賞・優秀賞を受賞した作品。200ステージ以上の再演を重ねてきた、いずみたくミュージカルの代表作の一つです。

 舞台は満州事変がまもなく勃発する戦争前夜の大連。虚無感や怒りを覚えながらも、ただひたすらにそれぞれの道で生きていく人々の人間模様を鵜山仁の新演出で描いたものです。

1月17・18日に新春例会、イッツフォーリーズの看板ミュージカル「洪水の前」がありました。清水市民劇場との合同例会で、会場の清水マリナートは熱気で溢れ返りました。楽しく進行する舞台の中に、現代の不穏な雰囲気に重なるシーンもあり、今上演する意義を改めて考えさせられました。終演後は2回とも役者陣のお見送りが行われ、コロナ禍開けの市民劇場の愉しさを感じました。

この例会では、元日に発災した能登半島地震で大きな被害を受けた、石川県の七尾演劇鑑賞会への支援募金を行いました。大変多くの方が募金をしてくださり、静岡・清水の会員さんの温かさを改めて感じました。

民藝・こまつ座『ある八重子物語』

第444回例会(静岡・清水合同例会)民藝+こまつ座

2023年12月6日㈬18:30~

    12月7日㈭13:00~

会場 静岡市民文化会館 中ホール
作/井上ひさし 演出/丹野郁弓

出演/篠田三郎、有森也実(客演)、

   千葉茂則、桜井明美 他

 

 舞台は神田川が隅田川へと流れこみ、花街として栄えた柳橋。昭和16年から敗戦直後の昭和21年にかけての柳橋・古橋医院。

 ここに集う人々は、水谷八重子に心酔する古橋院長を筆頭に、事務方、看護婦、女中まで全員が大の新派マニア。患者の身の上話もたちまち「婦系図」風の筋書きに。そこへ八重子そっくりの「音楽のような声」をもつ芸者花代が登場、恋愛事件もわきおこって大騒動。はたまた「女形の研究」に熱中するあまり、入営日に寝過ごし徴兵忌避者になってしまう大学生もからんで……。井上作品ならではの群像劇です。

 新劇から出発して新派で活躍した初代・水谷八重子(1905~1979)。この作品は、水谷八重子十三回忌追善公演に書かれました。水谷八重子は登場しません。水谷八重子の芸と生きざまに魅せられた人々がユーモラスな筆致で描かれています。

上から時計回り(スマホでは上から)に「運営サークルの打ち合わせ」「二日目終演後のロビー交流会」「ロビー交流会の記念撮影」「静岡駅での劇団の見送り」です。

文学座『五十四の瞳』

第443回例会 文学座

2023年9月12日㈫18:30~

             9月13日㈬13:00~
会場 静岡市民文化会館 中ホール
原作/鄭 義信 演出/松本祐子

出演/松岡依都美、頼経明子、

   神野 崇、越塚 学 他

 
 戦後間もない頃、瀬戸内海の小さな島・西島。採石業しか産業のないこの島唯一の学校「家島朝鮮初級学校」で教師をしている柳仁哲(ユ・インチョル)と新しく赴任した女性教師、康春花(カン・チュンファ)の指導の下、日本人も朝鮮人も分け隔てなく学んでいた。

 ある日、占領軍(GHQ)が全国の朝鮮人学校閉鎖を宣言する。大阪や神戸で大規模な抗議デモが巻き起こった。このままでは俺たちの学校もなくなってしまう!少年たちはデモに参加するため、親や先生に内緒で島を飛び出した。

上から時計回り(スマホでは上から)に「劇団のお迎え」「例会初日の役者との顔合わせ会」「文学座制作 前田さんのご挨拶」「静岡駅での劇団の見送り」です。